研究課題
行動する動機の強さの測定を利用した新たな疲労度定量法の開発(井上)脳内自己刺激を用いた疲労度の測定が可能かどうかを昨年度に引き続き検討した。手術の際にガイドカニューレを用いることで精度良くラット内側前脳束に電極設置することが可能となった。刺激電流として電流量を100~300mAに固定し、周波数が最大251Hzの矩形波を供与することで、ラットは安定して自己刺激のレバー押しを行うことがわかった。周波数を約10%ずつ減少することでレバー押し回数が徐々に減少し、これを50Hz程度までシリーズで行うことで、周波数に対する応答(レバー押し回数)曲線が得られた。予備実験として、15m/minの速度で30分間トレッドミル走行負荷したラットでは、この曲線が左側にシフトし、脳報酬閾値が高くなることがわかった。末梢組織のエネルギーレベル低下が中枢性疲労を発生する機構の解明(井上)メルカプト酢酸(MA)、および2-デオキシグルコース(2-DG)をラット腹腔内に投与するといずれも自発行動量の抑制を引き起こし、疲労様の行動を示す。この自発行動の抑制は、脳内に抗TGF-β抗体を投与することでMAについては阻止された。一方2-DG投与による抑制には影響しなかった。さらに、迷走神経を切除しておくと、MAによる効果は起こらなくなるが、2-DGによる抑制には影響しない。脳脊髄液中の活性型TGF-β濃度はMA投与により増大するが、迷走神経切除しておくとこの増大は見られなくなる。これらの結果から、MA投与により脂肪からのエネルギー獲得が阻害されるような状態では、この情報が迷走神経を介して脳に伝えられ、脳脊髄液中活性型TGF-βに変換されて自発行動の抑制が引き起こされていると考えられた。同様の現象は、別の脂肪酸代謝阻害剤であるetomoxir投与によっても観察された。2-DGによる糖質代謝阻害で引き起こされる自発行動抑制にはこれらの機構は関与していないと考えられた。
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Physiology and Behavior
巻: 101 ページ: 370-375
体育の科学
巻: 60 ページ: 819-823
http://www.nutrchem.kais.kyoto-u.ac.jp/nutrjoom/ja/outline-j/exercise-metab-j.html
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