広域分布性森林性哺乳類であるキタリス(エゾリス)・タイリクモモンガ(エゾモモンガ)が北海道に特有な森林植生に対して進化生態学的にどのような適応をしているのかを解明するため、平成22年度においては以下の野外調査を実施した。 1)キタリスについては採食資源の一つであるエゾマツ毬果の利用割合を調査した。昨年度同様調査区内においてエゾマツの毬果を収集し、その利用頻度・利用された毬果の形態的特徴を分析した所、存在量に対するその利用率は10%程度であり、キタリスはエゾマツ毬果を一定の割合で非選択的に利用する事が明らかになった(両者の間には生態的学に安定した関係が存在する可能性が示唆された)。また、被食毬果と非被食毬果の形態的特徴を解析した結果、キタリスに利用されたエゾマツ毬果は利用されなかったものより小型であることが明らかになった。この生物学的意義については全く不明であり、今後の興味深い研究課題である。 2)タイリクモモンガに関しては、昨年度の研究結果から北海道の山間部で最も多いトドマツ優占混交林により多く生息することが明らかになったため、巣箱設置調査区をトドマツ優占混交林に絞り込み、その繁殖生態学に関する研究を行った。その結果、本種の繁殖期は春期と夏期に認められ、夏期における一腹産仔数は有意に多いことが示唆された。また、一腹仔の性比については、春期・夏期共に雄:雌=1:1であり、有意差がない事が示された。
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