研究分担者 |
國崎 貴嗣 岩手大学, 農学部, 准教授 (00292178)
瀬川 典久 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (20305311)
山内 貴義 岩手県環境保健研究センター, 地球科学部, 主任専門研究員 (20506315)
出口 善隆 岩手大学, 農学部, 准教授 (40344626)
原科 幸爾 岩手大学, 農学部, 講師 (40396411)
松原 和衛(伊藤和衛) 岩手大学, 農学部, 准教授 (70258804)
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研究概要 |
野生動物の行動圏を調査する方法の一つであるテレメトリー調査は,一部のGPS発信器を除いて,そのほとんどが地上を調査者が随時アンテナを持って追跡する必要があるため,多大な労力とその割には誤差が大きいという問題を抱えていた。その労力軽減と精度の向上を目的として,生息地内に受信基地局を設置し,調査対象動物に取り付けた発信機からの電波をキャッチさせ,基地局に送ることにより,リアルタイムで動物の行動圏や環境利用,被害防除などを実用化させるシステムの開発とその実用化をめざした実験を平成22年~23年度の中心課題として研究を実施した。H22年度の実験の結果,より長距離の電波到達が期待される144MHz帯(アマチュア無線バンド)を用いてH23年度に数理科学研究所(群馬県)の技術者の協力を得てあらたなシステムの開発を行った。まず岩手県遠野市のクマ生息エリアの高所に2か所のアンテナシステムを構築した。平成23年度に引き続き、H24年夏期に2頭キノワグマの生け捕りに成功し、それぞれに新型発信機を装着して放獣、以後の新システムによる追跡を試みた。その結果、いずれも1か月前後の追跡ではあったが、多くの位置情報、環境利用の実態、行動範囲などに関する知見を得ることができた。特に利用が集中していた地域には、当該個体が移動した後ただちに現地に行くことが可能であり、最新の痕跡などを多く調査することができた。特に夏期には、これまでも言われていたアカマツ林の利用が顕著であったが、現地に行って痕跡調査を行った結果、そのほとんどが林床に存在する倒木、切り株に営巣するアリ類を採食している事実を確認した。これらの調査から、本システムは、リアルタイムに野生動物の環境利用や行動の詳細を把握するという点ではきわめて有効なものであることが判明し、今後の野生動物管理への応用が十分なし得る手法であるといえる。
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