研究課題/領域番号 |
21380090
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井出 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90213024)
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研究分担者 |
齊藤 陽子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (00302597)
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キーワード | 空間的遺伝構造 / 二次散布 / マイクロサテライトマーカー / 兄弟間競争 / 流水散布 / 雪上散布 |
研究概要 |
本研究は、林分の成立と成熟の過程における主要樹種の遺伝的多様性の動態を明らかにし、森林の遺伝的多様性の持続性を保障するための個別林分の森林管理のありかたを考察することを目的とする。そのため、林分の更新プロセスにおいて、樹木の遺伝構造形成に関連する要因のうち、1)散布種子の二次的移動が更新林分の遺伝構造および遺伝的多様性に及ぼす影響、2)異なるコホートからなる林分における遺伝構造と遺伝的多様性の実態、3)個体間の競争が林分の遺伝構造と遺伝的多様性に及ぼす影響、の3つについて研究を行う。本年度は、1)については東京大学富士演習林の調査地で昨年度収集したミズナラ散布種子および今年度収集した発芽実生の遺伝分析を実施し、種子散布実態を把握した。その結果、昨年度収集した種子には重力散布のみならず、強風による風散布も含まれること、今年度収集した発芽実生は、昨年度の種子よりも平均散布距離や最大散布距離が長く、動物散布が存在していることが示唆された。また東京大学北海道演習林の水辺林に設定した調査地において、昨年度収集したヤチダモ散布種子および今年度収集した冬季散布種子の遺伝解析を行い、種子散布実態を把握した。その結果、ヤチダモの二次散布を検出することができた。陸上では一度地上に落ちた種子が再度風で移動し、洲では流水が二次散布を担っている可能性が示唆された。2)では伊豆半島の天城山のヒメシャラ林に設定した調査地おいて、昨年度未済のヒメシャラの年齢を、成長錐を用いて調査した。また、立木の葉の遺伝解析を行った。その結果、全95個体のうち68個体が一時期に集中的に林分に侵入したこと、それらの空間的遺伝構造は全個体で解析を行った時と集中加入個体のみで有意な距離階級が異なることが明らかとなった。3)では、東京大学田無試験地の苗畑に設定した、ミズナラの個体間競争試験地において成長調査を行ったが、明確な結果は得られなかった。
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