研究課題/領域番号 |
21380090
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井出 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90213024)
|
研究分担者 |
齊藤 陽子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (00302597)
|
キーワード | 空間的遺伝構造 / 二次散布 / 兄弟間競争 / 自己間引き / ミズナラ / マイクロサテライトマーカー |
研究概要 |
本研究では、散布種子の二次的移動や個体間の競争といった林分の更新プロセスに関わる現象が、林分の遺伝構造および遺伝的多様性にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。 散布種子の二次的移動について、昨年度の研究で動物散布の存在が示唆されたミズナラに関して核SSRマーカーを用いて更なる検討をした。東京大学富士演習林に設置した調査区内において一昨年収集した散布種子と昨年度収集した発芽実生について遺伝分析をしたところ、調査区レベルでは二次的移動の前後で遺伝的多様性に差は認められなかった。これは、ミズナラ林内における実生更新についてDNAレベルの観点から捉えた場合、小動物による堅果の二次的移動は林分の遺伝構造や遺伝的多様性へほとんど影響を与えない可能性を示唆している。 個体間の競争に関して、ウダイカンバの家系内競争試験地において成長量の観点から検討をした。東京大学北海道演習林に2003年に設置した同試験地で2005年-2008年および2011年に各ウダイカンバ立木について、その胸高断面積とその周りに定着しているウダイカンバ立木の兄弟比率との関係を調査したところ、2006年-2008年までは周りに定着する個体の兄弟比率が高くなればなるほど胸高断面積は有意に小さくなったが、2011年は有意な差は検出されなかった。これは、林分の成立段階の立木密度が高い状況下において兄弟間の競争はより活発で成長阻害が引き起こされるが、林分が成熟するに従って兄弟比率の高い場所では不健全木の自己間引きが進行し立木密度が低下し、成長の良い個体が生残したことによると推測される。
|