研究課題/領域番号 |
21380096
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉岡 崇仁 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)
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研究分担者 |
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60237071)
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キーワード | 溶存有機物 / 森林流域生態系 / 渓流 / 溶存有機態炭素 / 三次元蛍光 / 腐植物質 / 錯体 / 溶存鉄 |
研究概要 |
溶存有機物の主体である腐植物質には、植物プランクトンにとって重要な生元素である鉄を利用可能な溶存態に留めておく機能(錯体形成)があるとされ、森と川・海のつながりを知る上で重要な物質である。しかしながら、溶存有機物の起源と生態系内における変質に関しては不明な点が多く、流域を通した研究も数少ない現状である。そこで、本研究では、森林流域全体を対象として、森林土壌から渓流・河川を経て海にいたる流路において、溶存有機物の動態を把握し、同時に溶存鉄濃度を測定することによって上記の点を明らかにすることを目的とした。森林土壌から渓流に流れ出る溶存有機物の質と量の変動を解析して河川・河口域での変質を解明するとともに、森林伐採などの環境変化が溶存有機物と溶存鉄の動態にどのように影響するのかを解析する。 平成22年度は前年度に引き続き、本研究の主対象地である由良川流域での渓流・河川水調査を行った。その結果、溶存有機物、溶存鉄濃度ともに空間的・季節的変動があるものの、一貫性があり、溶存有機物(溶存有機態炭素)の濃度は、森林を集水域とする渓流で変動が大きく、また、下流に向かって上昇する傾向が見られた。溶存鉄の濃度については、今年度ICP-AES法による分析の精度について検討を重ね、渓流・河川水中の濃度に関して十分な精度で測定できることが確認できた。この溶存鉄が、溶存有機物と錯体を形成している可能性については、限外ろ過法や樹脂カラムによる処理を実施する予定であったが、十分な検討ができていない。一方、河口域における溶存鉄濃度の調査から、出水時に上昇すること、上流で見られた溶存有機炭素濃度と溶存鉄濃度の相関がなくなることなど明らかとなった。平成23年度秋には芦生研究林内の人工林で間伐実験を実施し、伐採が土壌および渓流水中の溶存有機物さらには溶存鉄の挙動にどのような影響を及ぼすかの調査を行う予定である。
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