研究概要 |
課題1:中国内陸部に生育する耐乾・耐塩性樹木の生理特性解明と浸透調整能に関わる適合溶質の同定耐塩性樹木の生理特性解明の目的で、中国新彊ウイグル自治区アイディン湖周辺に生育する塩生植物5種(Tamarix hispida, Halocnemum strobilaceum, Kalidium foliatum, Karelinia caspica, および Phragmites australis)の器官別陽イオン濃度とそれらの体内分布を解析した。その結果、陽イオンの蓄積パターンは種により大きく異なった。葉に塩腺を有するTamarix hispidaは高い葉内Na^+濃度を示した。多肉性のH. strobilaceumおよびK. foliatumも高い葉内Na^+濃度を示した。これらの結果は根から吸収されたNa^+の多くが葉へ輸送されたことを示している。一方、Kalinia caspica and P. anstralisは極めて高い根のイオン選択性を示した。P. australisでは全ての器官で高濃度のK^+を蓄積し、その結果、他種より低いNa^+/K^+比が示された。 課題2:適合溶質の誘導による苗木の耐乾・耐塩性向上と植裁モデル実験 様々な濃度のNaCl溶液(0, 50, 100, 200 300mM)を処理した、中国新彊ウイグル原産のグミ科樹木であるElaeagnus angustifolia L.当年生苗木において適合溶質の分析を行った。その結果、200mMや300mM NaCl処理において、sucrose, β-alanine betaine, prolineそしてglycine等の重要な適合溶質濃度が上昇していることが明らかとなり、塩ストレスにより適合溶質が誘導され、苗木の耐塩性が向上しているものと考えられた。
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