研究概要 |
平成21年度は,CN50釘を用いた木材と合板の釘1面せん断接合について静的・動的実験を行い,実験方法と接合耐力評価法を検討した.実施内容は以下の通りである. (1)静的実験:振動台実験の加震条件を設定するため,釘接合部の静的1面せん断実験を行い,静的荷重-すべり曲線を求めた.この実験では,変位制御方式による正負繰り返し加力を行い,静的履歴特性を把握した後,破壊に至るまでの荷重-すべり曲線を記録した. (2)動的実験:小型震動台を用いた試行錯誤的な震動台実験を行った.この実験では,動的応答特性を把握・評価し易い調和振動による加震を行った.初めに,実験方法についての試行錯誤的な検討を行ったのち,(1)で得られた荷重-すべり曲線から計算された割線剛性と最大せん断耐力に基づき,調和震動の周波数を3,4,5,6,7Hz,静的荷重に換算した入力レベル(積載質量×入力加速度)を平均最大せん断耐力の1/3,2/3,3/3に設定した.これらの組み合わせについて,釘が曲げ疲労破壊を生じるか,加振時間が150秒に達するまで加振を行った. 上記の実験結果から,以下の知見を得た.(1)木材の釘接合部の動的応答特性は明らかな周波数依存性を持つ.(2)共振周波数に近い周波数の加振を受けると,入力レベルが低くても,釘が曲げ疲労破壊を生じる危険がある.(3)釘の低サイクル曲げ疲労破壊を生じさせる共振周波数は,釘接合部が降伏後,終局破壊に移行するまでの範囲に対応する低い周波数となる.(4)入力周波数が釘の初期剛性に近い場合,初めは敏感な応答を示すが,降伏が進行するにつれ応答が鈍化し,破壊を生じにくくなる.この実験結果から,低応力レベルにおける固有周期測定が,その接合部の動的破壊危険度を推定する指標とならないこと,釘の曲げ疲労破壊を特例と見なしてきた木材接合部の許容耐力評価法を見直す必要があることが明らかとなった.
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