研究概要 |
(1)木材の流体燃料化に及ぼす鉄触媒の効果:カラマツ(針葉樹)とダケカンバ(広葉樹)に鉄塩としてFe(OH)(CH_3COO)_2,ニッケル塩としてNi(CH_3COO)_2・4H_20をそれぞれ金属として3%,2%水溶液含浸で添加した後,室温から900℃まで昇温,1h保持し,この間に留出する油分(クロロホルム可溶分)とガス分を同定,定量した。その結果,両樹種ともに鉄はニッケルと同程度に300-500℃で留出する油分の脱酸素・低分子量化を促進し,油分の発熱量は無添加油分の1.2倍に増加した。また,鉄は500℃以上で発生する可燃ガス分,特に水素の発生量を無添加の1.8倍に増加させ,発熱量では1.4倍となった。さらに,H_2/CO比は3近くに達した。この可燃ガス発生量促進,組成改質効果はニッケルのそれらと同等で,十分満足しうるものであった。従って,鉄触媒炭化法が機能性炭素+流体燃料共生産法として実操業が有望であることが判明した。(2)850℃鉄触媒炭化炭の導電性能と液相高分子吸着能:カラマツの850℃鉄触媒炭化炭について。酸洗浄-450℃空気酸化という後処理を適用すると,導電性能が市販の高級品ケッチェンブラックと同等以上に達することを明らかにした。また,酸洗浄-800℃水蒸気エッチングを行い,糖や染料の吸着能が市販のクロマト用活性炭を上回ることを明らかにした。(3)500℃鉄触媒炭化炭の電気二重層キャパシタ(EDLC)電極性能:カラマツの500℃鉄触媒炭化炭のKOH賦活を800℃_1h行い,引き続き酸洗浄-粉砕すると,その重量基準,体積基準のEDLC容量は市販の当目的用ヤシガラ活性炭のそれぞれ1.5倍,2.2倍に達した。また,レート特性も優れていることから,この鉄炭は本電極用炭素素材として高い適正を備えていることが分かった。(4)その他:カラマツ500℃鉄触媒炭化炭の水蒸気ガス化を行い,800℃における高効率水素製造を確認した。カラマツ900℃ニッケル触媒炭化炭の硫酸インターカレーションを行い,ナノレベルでのインターカレーション適性の高さを明らかにした。
|