研究課題/領域番号 |
21380110
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高部 圭司 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70183449)
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研究分担者 |
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 助教 (60273489)
粟野 達也 京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
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キーワード | ヒノキ / ポプラ / ミクロソーム / コニフェリン / ATP / プロトン / 液胞 / 木化 |
研究概要 |
ヒノキの分化中木部を削り取り、超遠心機によりミクロソーム画分を得た。この画分にリグニン前駆物質と考えられる、コニフェリルアルコール、コニフェリン、シナピルァルコール、シリンジンなどを投与した。その結果、コニフェリンのみがATP存在下で活発な取り込みを示した。 この取り込み活性をポプラのミクロソーム画分と比較すると、ヒノキではポプラのおよそ2倍の取り込み活性であった。 続いて、ミクロソーム画分に様々な阻害剤を加えて、コニフェリンの取り込みを調べた。液胞膜タイプのATPaseの阻害剤を加えると、コニフェリンの取り込みは著しい阻害を受けた。また、プロトン消去剤を加えても、コニフェリンの取り込みは阻害を受げた。一方、細胞膜タイプのATPaseの阻害剤を加えても、コニフェリンの取り込みは阻害されなかった。さらにABCトランスポーターの阻害剤を加えても、コニフェリンの取り込みは阻害されなかった。 これらの結果より、液胞膜上にあるATPaseがATP存在下でプロトンを液胞内に取り込むことでプロトンの濃度勾配が作られ、プロトンの濃度勾配解消のために液胞外にプロトンが運搬されるのと反対にコニフェリンが液胞内に輸送されるものと考察した。すなわち、液胞膜上に存在するアンチポーターがコニフェリンを液胞内に輸送するものと結論付けた。 ヒノキの分化中木部を凍結乾燥しX線CT法で分化中木部を調べたところ、液胞内と思われる位置に針状の結晶が確認された。この結晶は、二次壁形成初期から中期の細胞中に観察されたが、二次壁の木化が活発な後期には消失した。この結果は、液胞中に蓄えられたコニフェリンが、木化の活発な時期に何ちか中メカニズムで細胞壁に輸送されたものと考えられる。
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