研究課題
1.これまでに200座近いサケの一塩基多型(SNP)マーカーを連携研究者とともに開発し、このうち96座が遺伝分析に応用できた。これらのSNPマーカーを用いた環太平洋サケ114集団の分析から、ミトコンドリアDNA(mtDNA)やマイクロサテライトDNA(msDNA)マーカーを用いた分析よりも詳細な遺伝構造がとくに北米において明らかになった。2.分析集団数が十分ではなかった日本のサケ集団について、新規取集を加えた41集団を53座のSNPマーカーで分析したところ、北海道5地域、本州太平洋側と本州日本海側の集団間に有意な遺伝的分化が認められた。遺伝的分化は、北海道と本州の集団の間で大きかった。これらから、日本のサケには遺伝的に異なる7つの地域集団の存在が示唆された。また、一部の河川で産卵遡上時期が異なる群の間に遺伝的分化が認められたことから、サケの遺伝構造が地理的だけでなく時間的な影響も受けていることが示唆された。3.この3年間で作成した環太平洋サケ146集団のSNP基準群の系群識別精度は、従来のmtDNAやmsDNAマーカーより高かった。2009年7-8月にベーリング海北部、中部、南部、および西部で採捕されたサケ未成魚について、SNPマーカー32座を使用し遺伝的系群識別を実施したところ、日本系サケは中部および北部ベーリング海に、ロシア系サケは南部および西部ベーリング海に優占することが分かった。一方、北米系サケは、アジア系サケと比ベベーリング海全域で少なかった。以上より、日本系サケは従来考えられていたよりも北の海域(北緯60°以北)にも回遊・分布することが示唆された。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件)
Environmental Biology of Fishes
巻: 94 ページ: 259-271
10.1007/s10641-011-9869-0
Journal of Fish Biology
巻: 78 ページ: 1508-1528
10.1111/j.1095-8649.2011.02958.x
Molecular Ecology Resources
巻: 11(Supplement 1) ページ: 195-217
10.1111/j.1755-0998.2010.02966.x
Transactions of the American Fisheries Society
巻: 140 ページ: 296-306
10.1080/00028487.2011.567643