研究概要 |
季節繁殖を行う温帯域の魚類と通年繁殖可能な熱帯域の魚類の生殖制御システムはいったいどこが共通でどこが異なるのだろうか?また,季節繁殖を行う魚類のうち,長日繁殖型魚類と短日繁殖型魚類の生殖制御システムはいったいどこが共通でどこが異なるのだろうか?本研究では周年産卵型のゼブラフィッシュ,長日繁殖型(春産卵型)のメダカ,短日繁殖型(秋産卵型)のアユとサクラマスを実験対象とし,これらの魚類の生殖制御脳内ネットワークを比較しながら研究を進めている.本年度は昨年度に引き続き以下の点を検討した. 1.脳内で発現する遺伝子のカタログ化 アユの脳を対象として,完全長cDNAならびにESTの塩基配列網羅的に解析し,脳内で発現する遺伝子のカタログを作成した. 2.周年産卵魚,長日繁殖魚,および短日繁殖魚の脳内において日長変化に応じて発現量の変化する遺伝子(季節繁殖制御遺伝子)のDNAマイクロアレイによる網羅的同定 長日条件下で飼育した魚と短日条件下で飼育したサクラマスを対象として,DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析)を行い,日長変化の前後で時間経過を追って発現が量的・質的に変化する遺伝子群の同定をを試みた.データ解析を現在進めている. 3.Dio2,TSH,KISS1, GPR54のcDNAクローニング 季節繁殖制御の中枢遺伝子であるDio2,Dio2の制御因子であるTSH,生殖制御通数因子であるkisspeptinをコードするKISS1,ならびにその受容体であるGPR54のcDNAクローニングを引き続き行った.また,in situハイブリダイゼーションによる発現部位の同定と発現量変化の測定を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究項目6点のうち,東日本大震災の影響を受けて実施できなかった項目が3点あるが,代替法により研究成果を出す目処が立った.また,予想外の発見があり,来年度の研究課題終了時における研究の大幅な進展が見込まれる.
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