研究概要 |
昨年度2月末、チリ津波によって、現場生け簀を失い、今年度再開した現場生け簀実験が再び、東北関東大震災の津波で失われたため、研究の遂行に大きな支障を来したが、以下の結果を得た。マナマコの摂餌生態については、大槌湾においてホタテおよびカキの養殖棚の直下で採取した沈降粒子に、炭素および窒素安定同位体で標識した珪藻Thalassiosira weissflogiiを混合し、マナマコに給餌し24時間の飼育実験を行った。沈降粒子の大部分は藻類由来の粒子から成る貝類の糞が占め、マナマコはこれを活発に摂餌することが明らかになった。冬季のマナマコは多くの個体が腸管を満たしており摂餌活動が活発であったのに対して夏季のマナマコは腸管内容物の量にばらつきがあり摂餌量が低下していることを示した。今後、同位体分析により、炭素・窒素同化活性を解析する。ナマコの成長特性については、岩手県大槌湾内において二枚貝類養殖棚下での現場飼育により行った。昨年度10月から今年度7月までの9カ月間にわたる測定結果より、カキ養殖棚下でのナマコの増重率(+168%)は、養殖棚のない環境下(対照群、+131%)と比べて明らかに高く、ナマコと二枚貝類との複合養殖の有効性が示唆された。今年度9月から新たに開始した同様の調査においては、ナマコ種苗の起源および年齢によって成長特性が大きく異なることが示唆された。数理モデルの構築は、鹿児島湾で行った現場観測結果に基づいて行った。その結果、底質の酸素消費過程を適切に再現できるようになった。このため,本底質モデルで与える有機物フラックスとして,カキやホタテの擬糞や糞粒の沈降速度等を考慮することにより,カキ・ホタテ養殖が底質へ及ぼす影響を評価できるようになった,さらに,マナマコの成長モデルをカップリングすることにより,マナマコによる底質改善効果が予測可能となる。
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