研究概要 |
沿岸性鯨類スナメリは混獲など人間活動の影響を受けており,本種の保全のためには個体数のモニタリングが必要である.目視調査により個体数が推定されてきたが,ほとんどが,調査ライン上の発見確率100%の仮定の下,安全を見込んだ過小推定となっていた.発見確率が風力など種々の要因の影響を受けて変動することも考慮されていなかった.個体数推定法の改良が必要である. スナメリに適用可能な発見確率推定法を開発すること,長崎県大村湾で最新の分布情報を得ることが当該年度の主目的であった. 1.発見確率推定法の開発 音響計測・ライントランセクト型目視の併用から発見確率を推定する方法を開発した.2010年11月に大村湾内の大串湾で調査船から音響データロガー(A-tag)2つを曳航しながら,生物音響計測範囲を1名の調査者が目視槻察した.調査距離32km,目視発見は13群 このうち音響・目視の2重発見は3群であった.調査ライン上の発見確率g(0)は0.58(CV=1.0)と推定された.発見データが少ないため,精度の低い予備的推定となった.次年度もこの調査を継続する予定である. 2.長崎県大村湾で最新の分布情報 2010年5月に大村湾全域を対象としたセスナ機目視調査を行った.主目視者2名はのべ326kmの飛行から計79群110頭を発見した.個体数を329頭(CV=0.18)と推定した.5月のこの調査時,スナメリは湾中央部を中心にかなり一様に分布していた.1月の北西部調査では,主目視者2名はのべ111kmの飛行から計48群71頭を主に調査海域の南側で発見した。スナメリの分布に季節変化があり,2010年1月には多くの個体が北西部に集中分布していたことが示唆された.
|