研究概要 |
マングローブ林が存在する水域には多くの魚類が生息し,重要な漁場のひとつとなっていると言われている。しかし,マングローブ水域になぜ多くの魚類が生息しているのか,また,マングローブ水域が魚類の隠れ場や餌場として実際にどの程度機能しているのかということについては,まだまったく検証されていない。そこで本研究では,マングローブ水域が魚類の餌場として重要かどうかを明らかにするため,沖縄県西表島の浦内川河口域にみられるマングローブ水域において,餌資源量と魚類の成長率との関係を調べる野外実験を昨年度に引き続き行った。 マングローブのある場所(マングローブ林の縁)とない場所(隣接する砂地)に網ケージ(縦50cm,横50cm,高さ50cm)を設置し,それぞれのケージに1種1個体の稚魚を投入して,7日間放置した後に各個体の成長率を調べた。この実験を食性の異なる2種(底生甲殻類食魚のアマミイシモチと多毛類食魚のセダカクロサギ)の稚魚に対して行った.その結果,アマミイシモチにおいてはマングローブのある場所で成長率が高いことがわかった。一方,セダカクロサギにおいてはマングローブのある場所とない場所で成長率に差はみられなかった。また,ケージ周辺における各種の餌の量を調べてみると,ヨコエビ類や多毛類の現存量はマングローブのある場所で多いことがわかった。 以上の結果より,マングローブの根付近は魚類の主要な餌が豊富に存在する場所であり,一部の魚種にとって重要な餌場として機能することが示唆された。
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