研究概要 |
昨年度の研究で、仔魚が高い摂餌選択性を示した餌料用動物プランクトンや、天然域での採集や選抜を通じて得たワムシ株を見出すことができた。今年度は、それらを餌料生物として給餌した結果、実際に仔魚の成長、生残、活力が変化することを明らかにした。 1)小型仔魚が高い摂餌選択性を示したProales similisの初期餌料としての活用を検討した。培養環境を水温25-30℃、塩分2-15、植物プランクトンのナンノクロロプシスやクロレラを培養餌料とすることが、本種の個体群増殖に最適な条件であると確認された。また市販のクロレラ製品で二次培養することによってSS型ワムシと同様に高度不飽和脂肪酸(EPA,DHA,AA)を栄養強化できた。 2)仔魚への給餌研究 マハタ:P.similisとSS型ワムシの単独給餌に比べ、両者の併用給餌によってマハタ仔魚の摂餌量と消化酵素活性の増大が起こり、10日令の生残がP.similis(2.7%)やSS型ワムシ(6.4%)の単独給餌時より高くなった(14.3%)。 メガネモチノウオ:本種は特に口径が小さく、SS型ワムシを全く摂餌できないため、量産飼育の成功例が皆無であった。しかし、本種の仔魚がP.simiisを活発に摂餌することがわかり、2-6日令にP.simiisを、6日令以降にSS型ワムシを給餌することによって、9日令までの飼育に成功した。 ヒラメ:3日令からL型ワムシを10個体/mLで給餌し、25~34日令の10日間はL型ワムシと汽水産ミジンコ、または、ワムシとアルテミアを併用給餌した。35日令以降は汽水産ミジンコとアルテミアをそれぞれ0.1~0.3個体/mLで単独給餌した。その結果、35日令での仔魚の摂餌成功率はアルテミア(100%)がミジンコ(44%)より高かったが、飼育終了時(68日令)の体長は、汽水産ミジンコ区がアルテミア区よりも有意に大きくなった。
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