研究課題
本研究は、ウイルス性及び細菌性疾病の診断・予防法を開発するために、T細胞サブセットの分化、成熟及び活性化機構を解明するとともに、ギンブナを感染モデルとしてウイルスや細胞内寄生細菌に対するT細胞機能を解明することを目的とする。本年度は、以下のような成果を得た。1.魚類CD4陽性T細胞の機能について、アロ抗原特異的増殖応答性をin vitro MLCにより示すとともに、卵白アルブミンに対する特異的増殖応答性を明らかにし、ヘルパーT細胞としての特性を有することを証明した。2.ギンブナのCD3εに対する抗体を作製しその特性を解明した。本抗体は、CD4,CD8陽性T細胞と異なるリンパ球を認識することが明らかとなり、今後のT細胞機能の解明に有用であることが判明した。3.CD4/CD8ダブルポジチープT細胞は、孵化後1~4ヶ月令の幼魚の胸腺において加齢に伴い増加することが明らかとなった。4.IFNγ2のin vivoへの接種は、細胞内寄生性細菌Edwardsiella tarda感染に対する抵抗性を誘発することが明らかとなった。今後、ワクチンアジュバンドとしての利用や組換えIFNγの抗ウィルス薬および抗細菌薬としての活用が期待される。5.魚類キラーT細胞の細胞傷害機構は哺乳類と同様にパーフォリン/グランザイムを介していることを証明した。これらの成果は、T細胞サブセットの基本的な機能は魚類から哺乳類に至るまで保存されていることを示したものであり学術的価値が極めて高い。また、6.キラーT細胞による細胞傷害活性がグランザイムの活性と一致することを示し、グランザイム活性の簡便な測定法を開発した。今後、魚類ワクチンの有効性評価法への応用が期待される。
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