研究概要 |
水産資源が豊かな日本では海藻の糖質をはじめとする海洋バイオマスは未開発の再生可能なエネルギー資源となる。本研究では,海藻糖質をエタノールに変換する能力を持つ2種類のビブリオについて,アルコール発酵に関連する遺伝子群の解析とその発現量バランスの解明を行い,マリンビブリオによる海洋バイオマスのバイオエタノール変換技術の基盤を構築する。平成21年度は,アルギン酸を分解・資化する能力を有するVibrio halioticoliのエタノール発酵関連遺伝子群の決定などを試み以下の結果を得た。 1.V.halioticoliは,グルコースやマンニトールを発酵代謝する過程で,D-乳酸を産生することが明らかになった。乳酸の産生はエタノール生産に影響を与える代謝系である。ショットガンシークエンス法で遺伝子解析を進め,D-乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)に類似する遺伝子をクローニングした。この遺伝子は959塩基のタンパク質コード領域(ORF)で構成され,この塩基配列から演繹されるアミノ酸は322残基と推定された。V.coralliilyticus ATCC BAA-450株のLdhと66.2%のアミノ酸が一致した。また,V.halioticoliのグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の部分塩基配列を決定した。 2.来年度から遺伝子解析を進めるVibrio sp.AM2株について,分子系統解析,染色体DNAの相同性解析および表現形質の決定を行い,これらの結果を他の近縁な種と比較しながら種の同定を試みた。その結果,この細菌が新種のVibrio属に属するものであることを明らかにし,新種提案を行った。
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