研究概要 |
水産資源が豊かな日本では海藻の糖質をはじめとする海洋バイオマスは未開発の再生可能なエネルギー資源となる。本研究では,海藻糖質をエタノールに変換する能力を持つ2種類のビブリオについて,アルコールや水素発酵に関連する遺伝子群の解析とその発現量バランスの解明を行い,マリンビブリオによる海洋バイオマスのバイオエタノール変換技術の基盤を構築する。平成22年度は,V.halioticoliに加え,水素生成能を有するVibrio sp.AM2のドラフトゲノムデータを得て,目的遺伝子の同定や発現を行い以下の結果を得た。 1.V.halioticoliのゲノムには,少なくとも16種のNAD(P)依存性アルコール脱水素酵素(ADH)遺伝子がコードされていることを明らかにした。また,E.coliのadhEに近縁な遺伝子の発現に成功した。 2.AM2のゲノムには,少なくとも18種のNAD(P)依存性ADHがコードされていた。 3.亜鉛依存性のGroup I ADHはV.halioticoliとAM2で共通して見られるが,微生物特有で亜鉛や鉄依存性ADHとして知られるGroup IIIのADH遺伝子はAM2株に多い傾向が認められた。 4.また,Group IIIのADHの中で,高級アルコール生産に寄与すると注目されているyqhD遺伝子がAM2株に3コピー見いだされた。この中の一つの遺伝子で,E.coliのyqhD遺伝子に62%の相同性を示すものの発現に成功し,しかも可溶性画分に発現していることを確認した。 5.AM2の水素生産に関与する遺伝子として,ギ酸-水素リアーゼ複合体オペロンを同定した。
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