湿地帯のセルロース分解機構を明らかにする目的で、東海、近畿及び九州地方の5河川の湿地帯底泥のセルラーゼ活性を測定した。筑後川(福岡県)、緑川及び浜戸川(熊本県)、淀川(大阪府)、田中川(三重県)の底泥を採集し、それらのセルラーゼ活性を測定したところ、河川ごとの活性に有意な差が求められた。これらの活性が、底泥中に生息するメイオベントスなどによるものかどうかをする目的で、実体顕微鏡下でメイオベントスを完全に除去し、さらにクロラムフェニコールにより微生物と菌類を完全に死滅させた条件下で底泥のセルーゼ活性を測定したところ、数日間静置した場合にも活性レベルはほとんど変化しなかった。この結果は、セルラーゼはメイオベントスなどから分泌され、生物とは独立に底泥内で作用している可能性を示唆していた。また、底泥をオートクレーブし結合したセルラーゼ活性をすべて不活性化したのちに、市販のカビ由来のセルラーゼを吸着させたところ、いずれの河川の底泥も高いレベルのセルラーゼ結合能を示した。しかし、吸着した活性レベルには違いが見られたことから、底泥成分が河川ごとにことなる可能性が示された。底泥成分を泥と植物残渣に分けてセルラーゼ結合能を調べた結果、両成分とも結合能を示したが、乾燥重量当たりの結合能は植物残渣の方が高かった。 これらの結果は、メイオベントスなどの湿地帯生物に由来するセルラーゼが植物残渣や泥などに吸着、固定化されることで、セルロース分解機能を発揮している可能性を示唆した。
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