研究代表者岩本の他、9名の連携研究者の参加を得て、以下のような調査・研究を実施した。 今年度は、代表的な共有資源である漁業資源に焦点をあて、国内では兵庫県明石市(2009年8月10-11日)と沖縄県恩納村(2010年2月18-20日)で、漁協調査を実施した。漁業資源管理の詳細な制度と、その現状を把握することが出来た。 海外の漁業調査は、タイ南部漁村で実施した(2009年8月22-30日)。タイ漁業局でのヒアリングも実施し、タイ国の漁業制度管理の制度的枠組みと、漁村レベルでのその運用実態が明らかとなった。このほか、連携研究者による海外調査を2件実施した。タイ・ラオス調査(7月20日~8月1日)とベトナム・ラオス調査(7月22日~30日)で、主として焼畑地帯における森林管理の変容過程と制度問題を、現地調査によって検討した。 本研究参加者の問題意識を共有し、調査結果を相互に検討するため、研究会を2回開催した(2009年5月9-10日、2010年2月28日~3月1日)。 本年の調査の中心であった、国内の漁協調査で得た知見を以下整理しておく。 (1)漁協とも、独自の組合員資格の設け、資源への負荷を高めない工夫をしている。 (2)とりわけ明石沖の主要な漁業であるノリ養殖業の権利配分システムは複雑で、生産力の有効利用と組合員間の公平性の両面を追求しようとしている。 (3)漁業権行使上も、定休日設定や操業時間規制、漁獲物のサイズ規制などを導入し、資源管理に配慮している。 (4)今後は組合員の減少が予想され、資源の過剰利用でなく過少利用を想定した制度設計の必要性が論じられてきている。近い将来の重要な論点となるだろう。
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