本年度は国内6カ所、海外1カ所で調査を実施した。概要は以下の通りである。 1.国内:①明石浦漁協、林崎漁協の漁業資源管理システムの実態と歴史的変容過程を継続調査した。漁協間の資源管理をめぐる軋轢とそれを調整する制度設計について多くの知見を得た。②釜石市管内漁協の震災被害実態とその復興問題を漁業資源管理制度との関連で調査した。③宮古島市における亜熱帯型農業と土地利用システムを検討することを目的に調査を実施した。以上のほか、連携研究者を中心に、④由利本荘市における町有林管理制度、⑤石垣市における沿岸漁業資源管理と環境保全、⑥宮城県石巻市・亘理町の漁業制度と震災復興との関連、などについて調査を実施した。 2.国外:トンガ王国で伝統的な土地利用システムと在来農業資源の利用システムについて調査した。主な知見は以下の4点である。①人口増加のもとで、伝統的な土地均等配分システムは機能しなくなっている。②農業的土地利用では伝統的なタロ・ヤム生産が依然として基本である。③近年、カボチャや熱帯果樹の輸出向け生産も展開し、トンガ農業の新しい展開をリードしている。④海外市場を対象とした農業生産の展開には、輸送システムの整備が必要であるほか、用途を拡大することに結びつく加工技術の開発が必要となる。なお、今回の訪問を受けて、ブレッドフルーツの加工開発をテーマとするプロジェクトを、東京農大とトンガ内のカウンターパートとの間で立ち上げたが、本科研研究の副次的成果であると評価している。。 最終年度であるため、これまでの研究成果のとりまとめに向けて努力した。また、この間調査に参加してもらった連携研究者とのディスカッションを個別に行い、成果の共有をはかった。
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