研究概要 |
平成22年度は,(1)広域スケールにおける田んぼダム効果の定量化のための「内水氾濫解析モデル」の開発,(2)取組の支援体制の検討,(3)取組普及のための活動の3項目を中心に研究・活動を行った.(1)田んぼダム効果の定量化のための「内水氾濫解析モデル」の開発 本課題で開発したモデルは,低平地域の水田畦畔や道路等の微小起伏を反映できる「地形適合セル」に加え,各土地利用地目-排水路間の流出入量を再現するアルゴリズムの導入によって浸水域および浸水継続時間を推定できる.本年度は,異なる地理的特徴をもつ3つの地域(新潟市横江地区,長岡市深沢地区,上越市三和地区)に本モデルを適用し,田んぼダムの効果を定量化した(リスト2番目の論文). (2)取組の支援体制の検討 田んぼダムの機能発現には農家の協力が欠かせないが,取組へのインセンティブの形成が求められている.本課題では,取組の公益的機能の評価に基づき支援体制の構築のための提言を行った(論文投稿中).こうした検討を土台に,農林水産省農村振興局防災課および新潟県農地部と検討会を開催した.現在,田んぼダム支援のための仕組みづくりが内部検討されている. (3)取組普及のための活動 上記の研究成果に基づき,新潟県,新潟市,上越市および土地改良区の協力のもと,田んぼダム技術普及のための説明会・講習会を開催した.田んぼダム発祥の地である新潟県村上市においては,「田んぼダムシンポジウム」(H22.12.18於:神林農村環境改善センター)を開催し,研究成果の周知によって農家非農家の取組に対する理解を促した.こうした活動に加え,我々の研究成果を踏まえて新潟市および村上市は普及用パンフレットを作成し,今後の取組の普及を目指している.
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