研究概要 |
本年度は,(1)平成23年新潟・福島豪雨時の田んぼダムの効果検証,(2)普及性を鑑みた落水量調整技術の確立,(3)田んぼダムの支援体制の検討,(3)田んぼダムの啓発・普及活動の4項目を中心に研究を行った. (1)平成23年新潟・福島豪雨時の田んぼダムの効果検証 田んぼダムの取組を実施している見附市貝喰川流域,新潟市白根郷流域,長岡市深才流域を対象に,昨年度に開発した「内水氾濫解析モデル」を用いて,田んぼダムの浸水被害軽減効果を検証した.豪雨当日の取組実施率は,貝喰川流域,白根郷流域,深才流域でそれぞれ,約39%,約80%,約93%であった.その結果,田んぼダムの実施によって浸水面積が,それぞれ約34%,約28%,約55%軽減したことが明らかになった.実施率が100%の場合,それぞれ,約46%,約35%,約57%の浸水面積軽減が可能であったことが示された. (2)普及性を鑑みた落水量調整技術の確立 豪雨時の取組状況から,田面水管理機能と落水量調整機能が一体化している(一体型)調整装置は,取組農家の営農に支障をきたすため,取組実施率が低下するという欠点が確認された.普及性を鑑みた場合,両機能を分離し,取組農家の営農に支障を与えない調整技術の確立が求められる.そこで,現在一体型の調整装置を供用中の貝喰川流域において,機能分離型の調整装置を開発した。 (3)田んぼダムの支援体制の検討 昨年度に実施した農林水産省農村振興局防災課および新潟県農地部との検討会が功を奏し,平成24年度の「農地・水保全管理支払交付金」の向上活動支援項目に田んぼダムの取組が位置づけられた。 (4)田んぼダムの啓発・普及活動 平成21年度からの研究の集大成として,新潟県の協力のもと,「田んぼダムシンポジウム」を開催する予定であったが,新潟・福島豪雨のため開催が延期された.シンポジウムは平成24年9月に開催する予定である.
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