研究概要 |
(1) 覆工背面に空洞を有するトンネルでは,この空洞を何らかの土木材料で充填することにより,トンネルの力学的耐久性が格段に向上する.本研究ではそのための充填材量としてウレタン樹脂を提案した.この材料は軽量,軽便であり,従来のセメント・モルタルに対して種々の利点を有していると考えられた.そこで,この材料の基礎的な材料力学定数の計測を行った. (2) 農業用水路トンネルのうち,既に機能診断が行われている現場の実施報告書を収集した.現段階では東北農政局管内の土地改良技術事務所で把握しているもののみを対象としたが,全国の事業所への情報提供要請を行う予定である. (3) 農業用水路トンネルの機能保全では,トンネル構造の観点からの診断とライニングコンクリートの材料の観点からの診断が必要になる.南九州の段丘砂礫層にある昭和26年に施工完了した農業用水路トンネルのクラウンとスプリングラインにおけるライニングコンクリートの材料評価を行ったところ,微小領域のセメントペーストの品質はビッカース硬さにより概ね同じであることが確認されたが,コンクリートとしては吸水率,空隙率,圧縮強度,動・静弾性係数が区間および部材位置により大きく異なり,構造解析で必要になる物性値のばらつきは大きいことが明らかになった. (4) 実際の水路トンネルを対象として行った載荷試験の結果と破壊解析を比較することによって,インバートの支持条件,覆工背面に作用する土圧の大きさや,地盤反力定数を推定した.そしてこれらの結果に基づいて,当該水路トンネルの安全性を評価した.
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