研究概要 |
1.『農業水利ストック情報データベース』に収録されているデータに基づき,水路トンネルの健全度評価と変状進行予測に関する検討を行った。S-1からS-5の5段階の健全度指標に基づく分析の結果,S-3,S-2と健全度が小さくなるほど外部要因を影響因子とする件数が多くなること,特にS-3についてはその経時的な変状進行傾向を見いだすことができた。 2.裏込め充填材としての発泡ウレタンの補強効果を,室内模型実験によって検討した。その結果,馬蹄形,ほろ形の両断面形ともに補強効果が得られること,発泡倍率が異なる場合,40倍発泡<30倍発泡<20倍発泡と,発泡倍率が小さい方がより大きな補強効果が発揮されること,がわかった。 3.ほろ形トンネルの覆工天端背面に空洞が存在する状況における補強工法として,FRPグリッドによる内面補強効果について検討した。空洞状況を再現した載荷試験を実施した結果,無補強供試体に比べ,補強供試体は最初にひび割れが発生する荷重や耐荷力を失う荷重が大きくなり,補強効果は十分に得られることが示唆された。また,覆工天端背面の空洞が小さい条件下や補強範囲を広げた場合の補強効果は,より大きくなることが明らかとなった。 4.これまでの室内試験結果や数値解析結果から,標準馬蹄形トンネルにおける裏込め充填工法の有効性が示唆された。そこで,供用中の農業用導水路トンネルのクラウン部に生じていると考えられる地山空洞部に現場発泡硬質ウレタンフォーム充填させ,さらに圧力を作用させることより,トンネル本体の健全性・耐久性向上を確保することを目的として,現地実証実験を行った。その結果,室内試験や数値解析における結果と同様の知見が得られ,裏込め充填工法の補強工法としての有効性が確認できた。
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