青森県内を流れる高瀬川水系における懸濁物質の有機物組成と起源を調べるため、高瀬川水系に含まれる河川から12地点を選び、平成21年4月から平成22年3月にかけて月に1度水試料を採取し、懸濁物質濃度、溶存有機炭素濃度、全窒素濃度、溶存窒素濃度、全リン濃度、溶存態全リン濃度、および各種無機イオン濃度の測定を行った。また、懸濁物質の有機物組成分析に用いる懸濁物質試料を1年間にわたり収集した。さらに、各採水地点上流の流域の土地利用状況を国土地理院発行の1/25000の地形図を用いて求めた。DTN濃度には季節的なサイクルが見られ、非灌漑期間中に高い傾向を示したが、負荷量で見ると降雨の影響があった採水日を除き大きな変化は見られなかった。流域内の水田面積率は6-45%、畑地面積率は0.4-25%、住宅地面積率は0.5-23%を占め、各土地利用とDTN比負荷量との関係を多重回帰分析より調べたところ、灌漑期においては住宅地・水田・畑地の寄与が高かった。特に、水田からの比負荷量は、畑地の約1.5倍、住宅地の約2倍と高い値を示した。一方、非灌漑期では、これら3種の土地利用以外に大きな排出源があることが推察された。懸濁物質の栄養塩類の挙動に対する寄与は、窒素で約2割、リンで約4割であった。湖沼のような閉鎖性水域では、一度水質が悪化するとその改善は容易ではないため、河川から流入する汚濁物質の質や量およびその起源を把握することは、水質保全にとって重要である。平成21年度の研究より、高瀬川水系における栄養塩類の動態に関する基礎的知見を得ることができた。さらに、懸濁物質の起源に関する研究に用いられる懸濁物質試料の収集され、平成22年度の研究のための準備が整った。
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