研究概要 |
事後的料金制度の構築のための第一ステップとして節水の限界費用分析を行った。まず、CVMや選択実験による表明選考法を用いて水の限界価値を測定した先行研究をとりまとめ、CVMの手法によって節水量とそれによって発生するコストの関係を複数の表現によって明らかにするアンケートを滋賀県A改良区を対象に行った。また、当該改良区では節水の際に支線用水路単位で協調行動を行わなければ、使用料金の低減が実現しないことから、この協調行動のための取引費用に関する質問も合わせて行った。回収率は3割で、210サンプルを得た。さらに、これをGISデータと組み合わせ、地理的な情報と組み合わせて解析するためのデータセットの構築を行った。 同様に、岩手県B土地改良区を対象に,限界節水費用の計測を試みた。計測方法は,同土地改良区の管轄面積が極めて大きく,農家属性も多岐に渡っていることから,役員・総代を対象としたアンケート調査(85サンプル)とした。その結果,節水政策の需要曲線を推定することができ,通常の用水使用量の1割相当分水量で10aあたり2,000円,3割相当で同2,500円という推計値が得られた。また,農業用水マネジメントのコストとして,賦課金制度上は明示化されていない畦畔草刈作業費用が,営農現場では極めて重負担となっていることが指摘された。 あわせて、米国カリフォルニア州における渇水銀行に関する予備的調査も行い、事後的料金制度に対する改良区の収入の変動を吸収するための1手法としての水利権リース市場についての分析を行った。 本年度の研究成果をもとに新たな政策についてのワークショップを関係県職員及び改良区事務局長を招いて実施した。
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