研究概要 |
節水の限界費用の推計方法として実験経済学的手法の適用可能性を検討した。はじめに限界費用計測に適した調査地の選定を滋賀県において行った。周知のように面積当たり賦課が基本の日本の水田灌漑用水では、節水水量とそのために投入する追加的な労働量の関係を農家に質問しても、そもそも使用水量が不明で答えることが難しい。ただし、例外的に支線分水口単位で従量料金制をとるパイプライン配水の改良区が存在しており、調査研究の了解を得た。ただし当該改良区でも、圃場単位の使用水量までは測定していないため、節水量を明らかにするためのベンチマークとなる通常の使用水量は不明のため、圃場単位で実際に節水を行う実験以外の方法を用いることとした。実験経済学の適用可能性について、海外研究協力者の独キール大学ローマン教授の助言を得た。新たな農業用水マネジメント手法の開発のために初年度で課題として浮き彫りとなった農業用水マネジメント・コストとしての畦畔草刈作業費用について,岩手県I土地改良区において綿密な現地調査を行い,その実際費用を明らかとした。立地条件(純農村地域,市街化近接地域,用水上流および末端地域)などで費用水準に有意な差があることが判明した。また,末端管理組織の性格(ビジョンや組織形態)の違いによって,将来的な畦畔草刈作業費用の負担問題の現れ方に大きな差があることが理論的に検討された。したがって,畦畔草刈作業費用の負担問題(普遍的な費用の把握方法とその最小化手法の開発)が新たな研究課題として,示唆されることとなった。 水利権リース市場の導入可能性を検討するため、米国カリフォルニア州の水利権リース市場について現地調査を行った。その結果、水量の実測をもとにしたリース市場は取引費用の観点から現実的ではなく、取引水量についての何らかの制度的近似が導入の前提条件であることを明らかにした。
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