研究概要 |
バイオエタノールの製造過程で排出されるエタノール発酵廃液の農地施用に伴う土壌環境に及ぼす影響を評価することを目的としている.本年度は以下のような研究成果を得た. ・サトウキビ由来のエタノール発酵廃液の特徴として,黒色で溶存有機物を多量に含む,酸性度,電気伝導度,CODやBODが高く,肥料成分を含む(カリウム成分が多い)等が挙げられる.エタノール廃液製造装置で作られた廃液を複数回入手して理化学性分析を行い,本研究で用いるエタノール発酵廃液が上記の特徴を有しており,理化学性も安定していること,また,実際にバイオエタノールを製造している会社(りゅうせき)より入手した廃液ともほぼ同様の実験材料であることを確認した. ・エタノール発酵廃液を添加した砂では,細菌数の変化が無く,放線菌数は減少,糸状菌は増加した.また,廃液を添加した黒ボク土,赤黄色土では蒸留水を添加したものに比べて,細菌数,放線菌数,糸状菌数とも1オーダー以上増加した.エタノール発酵廃液の殺菌処理の有無による違いが無かったため,エタノール発酵廃液は土壌中に既存の微生物の栄養源となって増殖を促したことが示唆された. ・エタノール発酵廃液中の溶存有機物の土壌への吸着量は黒ボク土>赤黄色土≫砂であった.また,脱着率は黒ボク土,赤黄色土とも概ね20%以下であり,エタノール発酵廃液中の溶存有機物は一旦吸着されると多くは脱着されないことが示唆された. ・エタノール発酵廃液を添加した赤黄色土および石英砂の乾燥時の撥水性を測定した.赤黄色土の撥水性は,原液を添加した試料には現れず,希釈液を添加した試料に現れた.石英砂では原液,希釈液のいずれの場合も撥水性はほとんど認められなかった.
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