研究概要 |
バイオエタノールの製造過程で排出されるエタノール発酵廃液の農地施用に伴う土壌環境に及ぼす影響を評価することを目的としている.本年度は,これまで行われたエタノール発酵廃液の作物栽培への利用のための試験研究に加え,エタノール発酵廃液の農地還元による土壌の物理性,化学性,微生物特性の変化と不飽柏土層内での窒素・炭素の動態に関する研究についてレビューを行った.その中で,エタノール発酵廃液の投与により土壌微生物活動が活発となり,土壌水分保持特性,土の濡れ性,土壌中の物質移動現象に大きく影響を及ぼすことが示唆される研究成果が散見されたが,それぞれの現象は今後,更なる研究が求められる状況であることを確認した.土壌カラムを用いたエタノール発酵廃液の浸透実験を行った.初期は散水強度に応じた動水勾配が1の流れが起きるが,時間とともに表層の土壌水分ポテンシャルが増加した.廃液中の懸濁物質や廃液投与に伴う微生物の繁殖により表層付近の透水性が低下するためと考えられる.エタノール発酵廃液を投与して得られる飽和・不飽和透水係数は,投与量の増加とともに減少すること,特に不飽和透水係数は微生物の繁殖により低下し,土壌水分ポテンシャルが増加しても不飽和透水係数は低下したままであった.これらの特徴の再現性も含め,更なる実験を次年度も行う予定である.また,エタノール発酵廃液に含まれる溶存有機炭素の移動過程に関する土壌カラムを用いた実験を行い,カラム排出液に含まれる溶存有機物の破過曲線データを取得した.更に,エタノール発酵廃液を添加した土壌の乾燥時の撥水性を測定し,乾燥過程の気温や湿度等の環境条件,微生物の繁殖と乾燥時の撥水性の関係をより詳細に検討する必要性が明らかとなった
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