研究概要 |
バイオエタノールの製造過程で排出されるエタノール発酵廃液の農地施用に伴う土壌環境に及ぼす影響を評価することを目的としている.昨年度に引き続き,土壌カラムを用いたエタノール発酵廃液の浸透実験を行った.散水強度を変えてエタノール発酵廃液の投与を行い,カラム内の各層の土壌水分ポテンシャルと排水量の経時変化を測定した.動水勾配と排出量からダルシー則により不飽和透水係数を求めた.実験終了時にはカラムを解体し,各断面で微生物の繁殖状況を確認した.その結果,地表面から20cm付近まで微生物の繁殖による間隙の閉塞が肉眼でも確認された.また,地表面下7.5cmまでの土層の不飽和透水係数は微生物の繁殖により低下し,土壌水分ポテンシャルが増加しても不飽和透水係数は低下したままであった.しかし,飽和透水係数の減少に比べると小さく,減少幅は1オーダーであった.また,昨年度に引き続き,エタノール発酵廃液に含まれる溶存有機物の移動過程に関する土壌カラムを用いた実験も行った.エタノール発酵廃液を農地施用した後,降雨強度の異なる降雨があった場合を想定した実験を行った.カラム下端からの溶存有機物の排出量は,降雨強度の違いに加え,土壌への吸脱着特性を反映したものとなることが確認された.更に,エタノール発酵廃液を添加した土壌の乾燥時の撥水性発現の実態を明らかにするために,島尻マージ土壌にエタノール発酵廃液を異なる希釈率で添加し,乾燥時の撥水性を測定した.希釈液を添加した試料で撥水性が発現したが,希釈液添加後,ガンマ線滅菌処理した試料では撥水性は生じなかった.これらの結果から,供試土壌のエタノール発酵廃液添加による撥水性の発現には,微生物が関与していることが示唆された.
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