研究課題
1.カバークロップ導入と微生物動態長期にわたり連年カバークロップを導入した作物生産をしている茨城大学(7年)と北海道大学(5年)の研究農場において、微生物活性を調査した。北大研究圃場でコムギ収穫後に土壌を採取したところ、深さ別の土壌微生物活性には顕著な差は認められなかった(北大・東大)。カビの活性と耐水性団粒サイズとの間には前回調査の2009年と極めて類似した関係が維持されていた。イネ科のカバークロップ(この場合は野生エンバク)にはカビによる耐水性団粒の形成を促進する効果のあることが考えられた。茨城大農場では、ロータリー耕やライムギ作付が土壌深30cmまで高い微生物活性を示した。大阪府立大学の詳細調査により、カバークロップ分解時にははじめに細菌が、次いで糸状菌が増え、この環境ではリン吸収に関与するAM菌の増加が抑制された。次第に糸状菌が減少してくるとAM菌活動が活性化される微生物相の変化を認めた。2.マメ科カバークロップの窒素供給とリン酸吸収促進について施設トマト生産でヘアリーベッチを前作すると、窒素施肥量を慣行の1/3に減少しても、慣行栽培と同等の収量効果があることを認めた。ヘアリーベッチはトマト栽培において生育初期に窒素源として有効で、化学肥料量を削減した場合にはヘアリーベッチ由来窒素の吸収量が増加することが示唆された(北大)。ヘアリーベッチ作付けにより後作トウモロコシヘの窒素とリン酸吸収が促進され、約3kg/10aの窒素分の代替肥料効果を認めた(大阪府立大)。マメ科カバークロップ前作では、リン投入量が化肥区に比べて少くてもリン酸吸収量はシロクローバー区が最も高く、続いてヘアリーベッチ区、化肥区の順となった(愛媛大)。緑肥区のホスファターゼ活性が化学肥料畑カバークロップを前作した場合、リンの投入量が化肥区に比べて少ないにもかかわらず、リン酸吸収量はシロクローバー区が最も高く、続いてヘアリーベッチ区、化肥区の順に低くなった(愛媛大)。これは緑肥区のホスファターゼ活性が化学肥料施用に比べ、栽培初期から高かったため、無機リン酸の供給能力が高くなり植物による吸収量が増加したと考えられる。マメ科緑肥利用はリンの有効化を高める可能性が示唆された。
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