研究課題/領域番号 |
21380152
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
岡田 益己 岩手大学, 農学部, 教授 (10355274)
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研究分担者 |
鮫島 良次 農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 上席研究員 (70355452)
下野 裕之 岩手大学, 農学部, 准教授 (70451490)
横井 修司 岩手大学, 農学部, 准教授 (80346311)
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キーワード | 発生・分化 / イネ / 日長感応 / 基本栄養生長 / 花成促進因子 |
研究概要 |
平成22年度の実験で、出芽2~4週間の時期に16時間から14時間に日長を急減すると、16時間あるいは14時間一定区に比べて、幼穂形成期が数日早まること、一方、14時間から16時間に急増すると数日遅れるという結果を得た。またその処理に伴って花成促進因子(Hd3a)が発現することを明らかにしたが、平成23年度は、この結果を再確認するために、同様の実験を繰り返した。しかし今年度は、昨年度とやや異なる結果が得られた。すなわち16から14時間への急減区で、14から16時間への急増区に比べて、幼穂形成期が数日早まった点は、昨年度の結果と一致したが、14時間一定区で急減区とほぼ同様の時期に、また16時間一定区で急増区とほぼ同様の時期に幼穂形成期となった。2カ年を比べると、実験時期の違いで気温に差があり、今年度の気温がより高いことが分かった。このため今年度の実験では、長日下における気温の作用が顕著になって、長日条件でも日長がより短い14時間区で、穂分化が促進されたと推察した。12時間の強制短日処理から幼穂形成期までの日数を調べたところ、16時間一定区で2週間程度、14時間一定区では10日程度となり、14時間日長では平均気温22℃以上の高温で穂分化が促進されることが判明した。 こうした気温と日長の相互作用が分かってきたので、作期移動試験で気温を変化させながら、日長処理実験を実施し、12時間短日処理後の穂分化に及ぼす気温の作用を調査した。本実験ではすべての処理で水温を25℃に制御しているため、生長点における日長シグナル受容体の形成は気温に左右されないと仮定した。過去の同様の試験も含めて5実験の結果を解析したところ、気温20℃では短日処理から2週間で幼穂形成期に達するのに対して、気温18℃ではそれよりも約10日幼穂形成が遅れることが判明した。この結果は、葉における日長シグナルの形成に気温が直接作用するか、あるいはシグナルの生長点への移動に作用することを示唆する重要な知見である。
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