研究概要 |
樹木クローン苗生産システムの効率化を目的として,樹木挿し穂を低温で管理し,発根部位のみを適温に加温処理するボトムヒート貯蔵法の効果を調べた.ポプラ挿し穂を気温10℃の低温庫で管理し,挿し穂の発根部位を20℃~40℃に加温した水に浸ける処理を行い,処理開始14日後における発根率,発根数および根部乾物重を調べた,処理中の光合成有効光量子束密度(PPFD)は10μmol m-2s-1とした.これは気温10℃におけるポプラの光補償点付近である.実験の結果,ポプラ挿し穂は発根部位を加温することで,気温10℃の低気温条件においても7日間程度で発根することが,発根に最適な処理温度は30℃であることが明らかとなった,次に,ポプラ挿し穂を気温10℃で発根部位を30℃に加温するボトムヒート貯蔵を6日間行った後に固形培地に挿し木して,気温30℃,相対湿度90%, PPFD100μmol m-2s-1の閉鎖型チャンバーで6日間育成した,対照区として,ボトムヒート貯蔵せずに挿し木して,閉鎖型チャンバーで12日間育成する試験区も設けた.その結果,ボトムヒート貯蔵した試験区では,挿し木して閉鎖型チャンバーに移してからの発根が早くなることが明らかとなった.しかし,ボトムヒート貯蔵中に葉の乾燥による劣化がみられ,対照区よりも品質が低下する傾向がみられた.ポプラの休眠枝を用いて同様の実験を.行った結果,ボトムヒート貯蔵によって休眠芽からの萌芽と発根の両方が促進される傾向がみられた.ボトムヒート貯蔵にかかるエネルギーは,閉鎖型チャンバーで適温・高湿度条件に保つために必要なエネルギーに比べて小さかったことから,発根・萌芽促進効果を安定して得ることができれば,樹木クローン苗生産における発根・萌芽までの生育管理に必要なエネルギーコストを低減できると考えられる.
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