研究概要 |
樹木苗生産におけるボトムヒート貯蔵の効果と挿し穂の光合成能力との関係を明らかにするために,ポプラを材料に用いて,ボトムヒート貯蔵の有無が光合成能力,葉の傷害および発根に及ぼす影響を調べた.その結果,本実験では,前年度のような対照区における葉の傷害はみられず,それにともなう光合成能力の低下もほとんどみられなかった.この原因については十分に説明できるデータは得られなかったが,挿し穂の採取時期や採取時の気候条件,母株の栄養条件などの影響が考えられた.次に,化学的処理が樹木挿し穂の発根に及ぼす影響を明らかにするために,スギ実生から得られた挿し穂を材料に用いて,インドール酢酸,インドール酪酸,ナフタレン酢酸を培地に添加して,挿し穂の発根を調べた.その結果,インドール酢酸処理では発根は促進されず,インドール酪酸処理において発根が促進された.挿し穂基部のカルス形成は,ナフタレン酢酸処理で最も促進されたが,発根はほとんど認められなかった.ボトムヒート処理の効果は化学的処理との併用によって高まることが期待されるが,その際にカルス形成の促進はかならずしも発根促進に繋がらないことが示唆された.さらに,閉鎖型育苗システムによる効果的な母株育成方法を検討するために,キョウチクトウを材料に用いて,屋外で育成された母株から採取した挿し穂と,閉鎖型育苗システムで育成した母株から採取した挿し穂にボトムヒート処理を施し,それらの発根率および発根量を比較した.実験は冬季~春季にかけて行った.閉鎖型育苗システムでの母株のシュートの成長速度は屋外に比較して大きかった.それに対して,採取した挿し穂の発根量は閉鎖型育苗システムで育成した母株から採取した挿し穂では小さかった.これらのことから,母株の育成環境に関しては,母株の成長を最適にする条件と,そこから採取した挿し穂の発根を最適にする条件は異なることが示唆された.
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