研究課題/領域番号 |
21380158
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
吉本 真由美 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 主任研究員 (40343826)
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研究分担者 |
岡田 益己 岩手大学, 農学部, 教授 (10355274)
兼松 誠司 農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター・生産環境研究領域, 上席研究員 (80343961)
福岡 峰彦 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 任期付研究員 (40435590)
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キーワード | ケイ酸 / イネ / 開放系高CO2実験 / 穂温 / いもち病 / 温暖化 / 高温障害 / 蒸散 |
研究概要 |
ケイ酸は、イネにとって農業生産上、実質的に必須の多量要素である。本研究は、温度変化や大気CO2濃度上昇などの地球環境変化に対応するイネのケイ酸吸収・輸送・分配プロセスを検証かつ再構築し、環境変動に対するイネ体内のケイ酸の挙動と、それが病害抵抗性や高温不稔に及ぼすインパクトを明らかにすることを目的としている。 これまでに計測を終えた4年間のケイ酸含有量を、部位別、経時的に解析したところ、葉身に特異的な変動が見られた。FACEでいもち病発生が高まった年は、葉身のケイ酸濃度が対照区に比べて著しく低下したが、葉鞘の濃度比率には大きな年次間差がなかった。またケイ酸吸収量の比率(FACE/対照)は、出穂期まで葉鞘では大きく変化しないが、葉身では幼形期に最大になる傾向が認められた。分げつ期の値が小さい年は幼形期の値が小さくなり、いもち病の年次変動と一致した。高CO2濃度がいもち病感受性に与える影響を調べるため、昨年までと同様の接種試験を行い、発病程度や生育様相とイネ体内のケイ酸濃度などとの関係を解析したデータを蓄積した。一方、ケイ酸資材の施用によるいもち病回避効果の試験を行い、CO2濃度上昇条件下での被害回避試験に向けた基礎データを集積した。登熟期における穂蒸散コンダクタンスと籾のケイ酸濃度との関係を開放系高CO2(FACE)実験で調べた結果、FACEによる群落内の微気象変化を通じて穂蒸散が促進されるものの、それによる籾へのケイ酸蓄積量への影響は認められなかった。開花から登熟にかけてFACEにより穂蒸散コンダクタンスが低下し穂温が上昇したが、ケイ酸濃度とは関係なく、FACEによる群落内の高温・乾燥化が主要因であると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去のEACE実験におけるイネサンプルのケイ酸濃度分析については、その量と種類が膨大であるため最終年度まで分析の継続が必要であるが、重点化することで本研究の目的は達成できる見込みである。ケイ酸濃度といもち病や高温障害との関係について実験データが集積されており、最終年度で、気候変動がケイ酸濃度の変化を通じてイネの生産性に及ぼすインパクトを明らかにできると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本研究課題の最終年度となるため、必要に応じて追試を行うとともに、最終とりまとめと論文執筆など成果の発表を行う。
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