研究概要 |
航空レーザスキャナー計測によって作物の群落立体構造を把握することを目的に,北大北方生物圏フィールド科学センター生物生産研究農場において生育調査を行い,上空からも航空機レーザ計測を実施し両者を比較した。対象作物は主としてデントコーンとし,生育調査では40cm厚さの層別刈取りを実施することにより,高度別の葉面積(葉面積密度)やバイオマス量を求めて立体構造のパラメータとした。また,スイートコーン,馬鈴薯,ダイズ,小麦,イネ科牧草については,自然草高を生育パラメータとして計測し航空スキャナー計測と比較した。 層別刈取りによる生育調査結果によると,層別葉面積密度が2つのピークを持つものがあったが,多くの区画で高層から中層でピークに達する分布パターンを示した。草高別に2グループに分けると高草高のグループは,規格化した草高の高い部分にピークが存在する共通点がある一方で,低草高グループは,LAIが高度の中央付近でピークになった。 どの高さでレーザパルスが多く反射されたかを見ると,高層高グループではいずれも上層付近でパルス数がピークに達したが,下層では極端に減少した。これはピーク付近がレーザデータによって群落構造を直接把握できる限界であり,下層の情報が得られにくくなることを示唆するものである。各層ごとに上から到達するパルスの累積数と上層からの累積葉面積密度との関係を調べたら,累積葉面積密度の増加に伴うパルスの反射確率がロジスティック曲線で近似できることが判明し,この関係によりパルスが十分に到達し得る群落上層部の葉面積密度を推定できた。 下層部では規格化した草高と層別葉面積密度の関係から各層における葉面積密度を推定することが可能となり,これと上層のレーザパルスによる葉面積推定を組み合わせることにより全層の葉面積が推定でき,同様の手法をバイオマスの推定にも拡張した。
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