研究課題
開発途上国における食糧の安定生産と環境保全のために、灌漑水と土壌肥料に着目した営農指針を提案することを最終ゴールとする。そのために、気象および土壌データからの水稲収量予測モデルの作成、農業水利の実態把握と水資源の定量的影響評価モデルを構築することが本研究の目的である。H22年度は以下の結果が得られた。(1)西部ジャワ・チアンジュール地区内において、水稲収量、草丈、SPAD値、分光放射データの計測、土壌サンプル採取を2回行った(7月/15地点、3月/48地点)。また、チタルム川流域内において、7月と3月に河川および排水路での採水、生産者への聞き取り調査を実施した。(2)7月2日および2月20日に観測されたSPOT5衛星データと現地調査データから、各調査地点の水稲収量推定式を求めた。(3)採水したサンプルの水質分析を行った結果、施肥直後と収穫直後ともにチアンジュール小流域内の上流部での全窒素量が高かった。これは上流部の山すそでは茶のプランテーションが盛んに行われており、このため施肥投入量が多いことが理由と推察された。さらに、水田土壌には収穫期にも係わらず無機態窒素量が多かった。この地域では窒素肥料を250kg投入されていることから、栽培期間中に投入した肥料成分が多く残存していると考えられ、過剰施肥の傾向が分析結果から読み取れた。現地調査データ、DEMデータ、土地利用データを用いて完全分布型TOPMODELの構築を行った。構築したモデルをチタルム川流域に適用し、計算結果の可視化を行った。その結果、熱帯アジアモンスーン地帯の季節変動の携行を利用可能水資源量の時間変化から把握することが出来た。
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Journal of Agricultural Science
巻: Vol.3(No.1) ページ: 54-67