開発途上国における食糧の安定生産のために、各種空間常用からの水稲収量予測モデルの作成、農業水利の実態把握と水資源の定量的影響評価モデルを構築することが本研究の目的である。 初年度は、西部ジャワ州チアンジュール地区の農家水田に数十箇所の調査地点を設定して生育調査を実施するとともに、気象観測機器をインストールした。さらに、過去15年間の統計情報、水資源・水質データ、地形・土壌データ、数値地図等を収集し、これと並行して高解像度衛星データから水田圃場区画GISデータを作成した。収集したデータはGIS上に一元化し、収量との要因解析を行った。 2年目は、継続して現地生育調査を行い、チタルム川流域内における河川および排水路での採水、生産者への聞き取り調査を実施した。採水したサンプルの水質分析を行った結果、施肥直後と収穫直後ともにチアンジュール小流域内の上流部での全窒素量が高かった。これは上流部では茶の栽培が盛んに行われており、このため施肥投入量が多いことが理由と推察された。さらに、水田土壌には収穫期にも係わらず残留無機態窒素量が多かった。この地域では窒素肥料を250kg投入されていたことから、栽培期間中に投入した肥料成分が多く残存していると考えられ、過剰施肥の傾向が分析結果から読み取れた。さらに、分布型TOPMODELの構築を行ってチタルム川流域に適用した。その結果、熱帯アジアモンスーン地帯の季節変動の携行を利用可能水資源量の時間変化から把握することが出来た。 3年目は、乾期と雨季に観測された衛星データと現地調査データから、各調査地点の水稲収量推定式を求めた。推定生産量と用水系統図を比較した結果、下流に向かうに連れて生産量が低くなる傾向が見られ、乾期作では下流域の水田で水不足が生じていることが確認された。この結果は現地でのモニタリングと聞き取り調査と一致しており、本研究の結果をもとに灌漑水管理方法の見直しに有効であることが示唆された。
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