前年度までに、36℃程度の高温ストレスに30日以上曝すことで、温暖化ストレス耐性の評価が出来ること、温暖化ストレス耐性には葉における活性酸素種の生成により引き起こされる酸化ストレスが関係していることが分かった。そこで、本年は、温暖化ストレスの高い品種育成を目的に、温暖化ストレス耐性に関わる遺伝子座を明らかにすることを目的に研究を行った。材料は、山梨酪農試験場で育成されたペレニアルライグラスのQTL系統である。この系統は、温暖化耐性の強い品種(Kangaroo)と弱い品種(Norlea)を交配して作られた系統で、7本の染色体に200以上の分子マーカーが作成されている。用いた系統数は72である。これら系統を昼夜、36℃/30℃に設定したグロースチャンバーで40日間育て、10日間隔でクロロフィル蛍光(Fv/Fm)により傷害度を調べた。また、処理前と処理後40日の葉の過酸化水素濃度も合わせて測定した。 交配に用いた親品種には、40日目のFv/Fm値と過酸化水素濃度に有意差が見られ、親品種の温暖化ストレス耐性は、酸化ストレスにより引き起こされていることが裏付けられた。 72の系統間にも処理後40日目のFv/Fm値と過酸化水素濃度に大きな変異が見られた。系統間にはFv/Fm値と過酸化水素濃度に負の相関が見られ、過酸化水素の蓄積の低い系統がストレス障害も低い傾向にあった。しかし、親品種を越える耐性を持つ系統は見られず、多くの系統は親品種の中間に分布した。処理40日目のFv/Fmと有意な関係を示す遺伝子座が、2番目の染色体に発見された。しかし、40日目の過酸化水素濃度と有意な関係を持つ遺伝子座は見つからず、量的遺伝子座の解析は表現型の相関関係とは独立している可能性が示唆された。
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