研究課題
本研究では、慢性暑熱ストレスにともなう生産性の低下を改善するため、暑熱時のROS過剰産生を調節するスイッチ群(特にUCP(脱共役タンパク質)とミトコンドリアDNA)の機能発現特性を体温と飼料摂取の制御と連関させて解明し、ネットワークを構成する系全体を調節して暑熱ストレス適応の最適化をはかる。すでに、暑熱環境下における肉用鶏の生産性低下には、活性酸素種(ROS)の過剰産生が関与することを報告している。このため、機能性資材の給与によりROS過剰産生を抑制できれば生産性低下を緩和できると考えられる。しかし、in vivo試験による多数の資材候補の評価には膨大な労力と時間を要する。そこで本研究では、暑熱ストレスに有効な資材をより効率的にスクリーニングするため、鶏骨格筋細胞を用いた暑熱ストレスモデルの構築を試みた。0日齢肉用鶏雄の浅胸筋より抽出した骨格筋細胞をサブコンフルエントになるまで培養後、41℃で6h高温曝露した(対照区:37℃)。曝露終了後、ROS産生量、タンパク質量、avUCPのmRNA発現量を測定した。また、機能性資材によるROS産生制御の可能性を検討するため、抗酸化剤(Tempo1)を培地に添加し、1hの前培養を行った後、同様に高温曝露した。その結果、41℃区でROS産生量の増加、タンパク質量の減少が認められた。また、これまでのin vivo試験と同様にavUCPのmRNA発現量が減少した。さらに高温時のROS産生量の増加、タンパク質量の減少はTbmpo1添加により抑制された。以上より、in vitro試験においてもin vivo試験と同様の生体応答が認められ、さらにTempol添加によりROS過剰産生が抑制されたことから、本モデルは機能性資材のスクリーニングモデルとして有用であることを示した。
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