研究課題
前年度に引き続き、体温上昇以外の原因によるROS過剰産生系を明らかにするため、TL1Aの定量ためのペプチド抗体を準備し、TL1A検出系を確立することを試みたが、保存抗体あるいはサンプルに不具合が生じるとの問題が生じたため、これを発展的に解消し、最終目標である暑熱ストレス適応の最適化のin vivo実験を多数実施した。具体的には、骨格筋に加え肝臓ならびに栄養素吸収の場である小腸粘膜のミトコンドリア機能を調査するとともに、グルタミンおよびグルタミン酸給与によって暑熱ストレスを緩和できるか否かを検証した。その結果、(試験1)暑熱感作(33℃、6d)によって増体量および飼料効率が著しく低下した。浅胸筋ミトコンドリアでは、これまでの結果と異なり暑熱によってROS産生量は増加しなかったが、ATP合成速度が低下し、肝臓ミトコンドリアではROS産生量・ATP合成速度とも低下した。これに対し、小腸粘膜ミトコンドリアではこれらの低下は認められずむしろやや増加することが示された。また、暑熱によって、腸粘膜における陰窩に対する絨毛の長さの割合が低くなった。(試験2)アミノ酸給与により、暑熱にともなう増体量・飼料効率の低下が一部緩和された。さらに、暑熱時の小腸粘膜ミトコンドリアROS産生量の増加ならびに絨毛/陰窩の割合の低下もアミノ酸給与により軽微ながら抑えられた。以上より、慢性暑熱感作にともなう増体量の低下には、小腸粘膜におけるミトコンドリアROS産生量の増加や形態変化が関与している可能性が示唆され、さらにグルタミン+グルタミン酸はこれらの変化を抑制し、暑熱時の増体を改善する可能性が示された。
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Comparative Biochemistry and Physiology, PartA
巻: 159 ページ: 75-81