本研究は、コラーゲンが豊富に含まれている鶏皮などの畜産副産物の有効利用法の開発を目指して着手した。コラーゲンは、構成アミノ酸の約30%がグリシンであるというきわめて大きな特徴を有するタンパク質である。このグリシンは、還元糖が存在する状態で加熱すると、メイラード反応を起こしやすいことが知られている。メイラード反応生成物の多くは、食品に好ましい風味を付与する。さらに近年では、メラノイジンなどのメイラード反応生成物に保健的機能があることも明らかにされている。このようなことを背景とし、コラーゲンを含む畜産副産物を原料としてメイラード反応を積極的に利用することにより、嗜好性と保健的機能性を備えた優れた新規食品素材を開発できると考えた。今回、加熱処理により鶏皮中のコラーゲンをゼラチン化した後、さらにプロテアーゼ処理によりペプチド化させた。次いで、キシロース等の還元糖を加え加熱することにより、得られたメイラード反応生成物を含む素材を調製した。メイラード反応により生成する低分子の香気成分とメイラードペプチドは、食品の嗜好性に大きな影響を及ぼすことから、官能試験と味覚センサーを用いた評価を実施した。その結果、適切に設定した反応条件(還元糖種や反応pHなど)においては、嗜好性に優れた素材が調製可能であることが示された。一方、主としてスーパーオキサイドイオン消去能などの抗酸化活性に起因する保健的機能性について検討した。その結果、細胞DNA損傷抑制、生体脂肪酸化抑制、血圧降下といった作用を有することが認められた。さらに、メイラード反応生成物中の嗜好性や保健的機能性に寄与する化学成分の同定や特性解明についても検討を進めている。
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