研究課題
本研究は、クローン技術を利用してヒト型のABO式血液型抗原(ABO抗原)を発現するトランスジェニッククローン豚を作出し、これを用いてABO抗原に対する免疫寛容誘導法を確立する事を目的としている。ABO式血液型の不適合は移植における主要な危険因子の一つであるが、慢性的な臓器不足を背景にABO不適合臓器移植が行われているのが現状である。技術の進歩によりABO不適合移植における臓器生着率は向上したものの、不適合なABO抗原に対する抗体が産生される結果、拒絶反応が発生し得る。これを防ぐ為の有効な手段として、本研究では、患者本人のリンパ球を用いて、ABO抗原に特異的なB細胞に「免疫寛容」を誘導する事を目標としている。この研究を臨床応用に結びつけるためには大型哺乳動物を用いた実験が不可欠であるが、現在のところ最適な大動物実験モデルが存在しない。そこで、ABO式血液型をヒト型に改変したクローン豚を作出し、この動物を用いた免疫寛容実験を行う事によって研究を推進させる事を目指している。平成23年度には、既に得られているブタ型A抗原を発現するクローン豚の体細胞に、ヒトの0抗原発現酵素の遺伝子を導入するリクローニング法によってヒト型A抗原を発現する豚細胞を作製した。この細胞核を注入した胚を移植した4頭の母豚のうち1頭から3頭の子豚が産まれたが、生後1ヶ月までに全頭死亡した。死亡原因の特定には至っていないが、やや未熟状態で産出された事が原因の一つと考えられた。これら産子の各種組織におけるヒト型A抗原の発現について解析したが、目標とする血管内皮細胞へのヒト型A抗原の明らかな発現を確認する事はできなかった。また、ヒト型0抗原を発現する新たな豚細胞を作製して核移植に用いたが、産子は得られなかった。
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