研究課題/領域番号 |
21380171
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
阿部 宏之 山形大学, 理工学研究科, 教授 (10375199)
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キーワード | 電気化学計測 / 細胞呼吸 / ミトコンドリア / 生殖細胞 / 電気化学顕微鏡 / 卵成熟 / 胚発生 |
研究概要 |
本研究は、電気化学イメージング技術を応用した超高感度細胞呼吸測定システムを開発し、超未成熟卵子から着床胚に至る一連の生殖プロセスにおけるミトコンドリア呼吸機能の解析を目的としている。本年度は、前年度までに開発した超高感度ディスク型マイクロ電極とHuman tubal fluid (HTF)培地を基本とする非侵襲測定液を用いた細胞呼吸計測システムを構築し、その有効性を検証するために単一卵子のミトコンドリア呼吸能解析を行った。 (1) 細胞呼吸測定システムの構築:走査型電気化学顕微鏡(SECM)に先端径2~5 umのマイクロ電極を装着し、Human tubal fluid (HTF)培地を基本とする呼吸測定液を用いてマウス及びウシの単一卵子の呼吸量を測定した。その結果、低ノイズで再現性の高い計測データが得られたことから、本システムは単一卵子の呼吸量測定に有効であることが明らかになった。 (2) 卵子のミトコンドリア機能解析:ウシ卵子を用いて、卵子成熟過程におけるミトコンドリア呼吸機能解析を行った。その結果、無血清培養を用いて成熟培養を行ったウシ卵子では、成熟過程において呼吸量が顕著に増加し、細胞内でのミトコンドリアの移動が観察された。また、呼吸量変化とミトコンドリアの膜電位変化が密接に関連していることが明らかになった。ミトコンドリア呼吸機能を分子生物学的に解析するために、RT-PCRを用いて呼吸鎖複合体(Cox)遺伝子の発現を解析した結果、核ゲノム及びミトコンドリアゲノムそれぞれに由来するCoxサブユニットのmRNAの検出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の前半で目標としていた単一卵子及び胚の呼吸量測定を可能とする高感度細胞呼吸測定システムを確立することができた。また、研究期間の後半で計画している卵子のミトコンドリア呼吸機能解析に着手し順調に成果が挙がっており、当初の計画通りに研究が進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、本研究の達成目標としていた未成熟卵子から胚盤胞までのミトコンドリア呼吸機能解析を行うために、以下の研究を行う。 (1)ミトコンドリアの細胞内局在解析:MitoTrackerを用いて卵子及び胚における活性型ミトコンドリアの細胞内分布を詳細に解析する。 (2)ミトコンドリアの微細構造解析:卵子及び胚におけるミトコンドリアの微細構造を解析する。 (3)細胞内ATP量の解析:単一の卵子及び胚におけるATP含量を詳細に解析する。 (4)呼吸鎖関連遺伝子の発現解析:ミトコンドリア内膜に存在し、酸素消費に直接関与している酵素複合体チトクロームc酸化酵素(COX)の遺伝子発現を解析する。
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