本研究は、電気化学イメージング技術を応用した超高感度細胞呼吸測定システムを開発し、超未成熟卵子から着床胚に至る一連の生殖プロセスにおけるミトコンドリア呼吸機能の解析を目的としている。最終年度は、前年度までに開発した「細胞呼吸計測システム」を用いて未成熟卵子から胚盤胞の呼吸量測定を行うとともに、呼吸測定の有用性を検証するためのミトコンドリア呼吸機能解析を行った。 (1)卵子のミトコンドリア機能解析:ウシ卵子を用いて、卵子成熟過程におけるミトコンドリア呼吸機能解析を行った。ウシ卵子では卵成熟に伴いミトコンドリアの細胞内移動が顕著になり、呼吸量が増加することが明らかになった。また、これらの変化は培養条件によって異なることがわかった。 (2)胚発生過程におけるミトコンドリア呼吸変化:ウシ及びマウス胚の発生過程における呼吸量変化を解析した結果、桑実胚から胚盤胞にかけて呼吸量の顕著な増加が起こった。この呼吸活性の上昇に合わせて、ミトコンドリアの形態的発達、ミトコンドリア膜電位及びATP含量の増加、呼吸鎖複合体(Cox)遺伝子の発現量の増加が起こることが明らかになった。 以上、本研究では目標としていた(1)超高感度細胞呼吸測定システムの開発、(2)卵子及び胚の発生過程におけるミトコンドリア呼吸機能の解析に関して、研究計画通りの成果を挙げることができた。
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