研究課題
近年、哺乳動物においては、多能性を保持する胚性幹細胞(ES細胞)や万能細胞(iPS Cell)が樹立されている。再生医療や生物生産への応用を目指し、これらの幹細胞から様々な臓器・器官や個体の再生が試みられている。しかし現在に至るも、鳥類においては完全な幹細胞は樹立されておらず、また完全な臓器や個体の再生はなされていない。家禽においてこれらの幹細胞株を樹立し、その分化制御が可能となれば家禽生産や希少鳥類の増殖や保全に多大な貢献がもたらされることが期待される。ニワトリ初期胚から、多能性を持つ細胞を厳密に分取し、その分化を培養条件下で人為的に制御することを目的として研究を行った。受精卵中で発生する初期胚から胚盤葉明域中央部細胞を採取した。胚盤葉明域の周囲に付着する不要物を、PBSを用いた洗浄によって完全に除去した。また初生雛から得られた脂肪幹細胞を分離した。こうして、胚性細胞由来の細胞サンプル、及び、体性細胞由来の細胞サンプルをそれぞれ得た。得られた胚性細胞、及び、体性細胞から少数の多能性幹細胞を厳密に分取した。これらの胚性幹細胞及び体性幹細胞を培養したところ、様々な形態を示す細胞コロニーが確認された。またこの胚性幹細胞は多能性マーカーで強く染色された。培養脂肪幹細胞の遺伝子発現の解析によって、これらの細胞において骨芽細胞遺伝子が強く発現していることが明らかとなった。さらに放射線照射によって退縮したレシピエント胚における血管の再生能を保持することが示唆された。さらに、単一の鳥類幹細胞(SP細胞)を培養条件下で確実に増殖し得る実験系の開発を試みた。単一幹細胞を培養したところ活発に増殖し、細胞塊を形成することが明らかとなった。以上より、本課題の研究の進展によって、家禽育種や家禽資源再生に新たな活路を拓き得るものと考察された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Development, Growth & Differentiation
巻: 55 ページ: 20-40