研究概要 |
鳥類の雌性生殖器の感染防御機能は,個体の健康と産卵された卵の食品としての安全性を確保するために重要である。私達は抗菌ペプチドのトリβディフェンシン(avBD)による卵管の自然免疫機能とその調節機構の解明を目指している。これまでに,卵管で微生物の成分を認識するToll様受容体(TLR)とavBDが発現し,グラム陰性菌の成分であるリポ多糖(LPS)による刺激はこれらの発現に影響することを示してきた。 本年度は、卵管粘膜のTLRを介する免疫応答の特性と休産期に卵管の感染性が高まる理由を追究した。(1)TLR4のリガンドであるリポ多糖に反応して炎症性サイトカインやケモカインの発現が増加し、さらにT細胞の誘導を含めた免疫応答が起こるか、(2)この免疫応答が産卵期と休産期で異なるかということを解析した。その結果、LPSで刺激すると産卵期と休産期のいずれでも炎症性サイトカインのIL1βとIL6、ケモカインのIL8とリンホタクチンの卵管粘膜における発現が高まる傾向が認められた。一方、T細胞の動態を解析すると、CD4+T細胞の卵管粘膜への流入は休産期と産卵期とで差を示さないが、CD8+T細胞の流入は休産期に低下することが示された。このことから、産卵期と休産期のいずれでも卵管粘膜はサイトカインとケモカインの発現機能を保持しているが、T細胞の流入能の低下が休産期の免疫機能の低下をもたらす1因であることが考えられた。LPSがTLR4に作用した下流で転写因子NFκBが関わることを実証するために、卵管粘膜のNFκBの検出を試みているが現在のところ検出できていない。
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