研究課題/領域番号 |
21380174
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉村 幸則 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (10167017)
|
キーワード | 鳥類 / 卵管 / 自然免疫 / サイトカイン / 抗菌ペプチド / 繁殖 / 粘液糖類 / 粘膜バリア |
研究概要 |
本研究は鳥類卵管の自然免疫による感染防御機能を明らかにするために、抗菌ペプチドであるトリβディフェンシン(avBD)産生の調節機構の解明を目指している。本年度は、卵管の抗原提示機能を含む免疫システムの発達には一定の抗原刺激が必要である可能性、微生物特異的成分によるTLRの刺激が卵管粘膜のサイトカイン発現を刺激して同サイトカインがavBD産生を刺激する可能性、そして感染防御の第一線に働く粘液によるバリア機能の形成機構を追究した。(1)膣部にリポ多糖(LPS)を連続投与して主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現およびT細胞サブセットの発現を解析したところ、MHC発現には影響は見られなかったが、T細胞サブセットであるCD4、CD8、TCRγδ陽性の細胞が増加し、またT細胞関連ケモカインレセプター(CCR6)の発現も増加した。このことから抗原による連続刺激は、粘膜の抗原提示機能には影響しないが、T細胞貯蔵を増加させて免疫機能を高めるものと考えられた。(2)膣部の粘膜組織を培養してLPSで刺激すると生体内での反応と同じくIL-1βとIL-6の発現が高まり、また微生物特異CpGオリゴDNAで刺激してもIL-1βの発現が高まること、IL-1βで刺激するとavBD10の発現が高まる傾向が認められた。このことから粘膜細胞が微生物成分を認識すると炎症性サイトカインが産生され、これがavBD産生を刺激して感染防御に働く可能性が示唆された。同様のサイトカインとavBD発現との関係を卵巣でも検証して生殖器における機構として一般化することを試みている。(3)微生物の侵入に抵抗する粘膜バリアの構築機構を追究したところ、産卵鶏より休産鶏で粘液の産生が少ないことが明らかとなり、このことは休産鶏で粘膜バリア機能が低下する一因となることを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、卵管粘膜において微生物特異的DNA成分の刺激により発現するサイトカインがavBD産生を刺激する可能性、抗原の連続刺激が抗原提示能やT細胞貯蔵に及ぼす影響を解析する計画を主としていた。これらに関連する基本的な結果をほぼ得ており、今後にデータを追加することで完成できる。また、粘膜バリアの構築機構にも着手した。
|
今後の研究の推進方策 |
粘膜バリアの構築機構を明らかにすることが感染防御機能に重要であるので、次年度の研究計画にはこれを加えるように修正する。
|